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雨音のする画廊

ターナー展と「時代の気分」



またもやご無沙汰しております。猫足です。

しかし、「猫足」ってなんなんですかね、もうちょっと名前らしいハンドル付ければいいのに。

その昔、中臣鎌足っていうかたがいらっしゃいましたが、
ここの筆者は「ねこたり」ではありませんよ。「ねこあし」です、念のため。



この春はいつものようには桜を楽しめなかった。

「いつものように」というのは、
酒好きのくせに、
花見と称する単なる野外の宴席には決してくみせず(あのブルーシートの色がまず許せない)、
ただもう桜、
それも曇りや雨の日の桜を好んで、食い入るように見つめる。

…という、筆者が恒例とする、いささか変態的な(言っちゃった)楽しみ方のことをいう。



なんだか急に暑いくらいになったなと思うと、いきなり満開。
初夏のような日射しに顔をしかめている間に散り始め、
早いところはもう葉桜になろうというここ数日になって、肌寒さが戻ってきた。


ここ数年で最悪の経過だとは思うが、
とりあえず桜の木の皆さんには、今年もお疲れさまでしたと言いたい。(←謎の視点)





さて、
今日は京都文化博物館の特別展「ターナー 風景の詩」を観に行ってきた。



Turner_top-680x272.jpg
▲京都文化博物館公式サイトから引用



ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775-1851)、イギリス最大の風景画家。
早くから日本でもよく知られていて、夏目漱石の「坊っちゃん」にもその名が登場する。
(赤シャツと野だいこが「ターナーの松」を吹聴するくだり)



展示は時系列ではなく、「風景画家」という大きすぎるくくり方を、4つのジャンルに分けて見せるものだった。
中でも「海景」のパートでは、写真も映像もない時代のその観察力、描写力に息をのむ思いがした。

また、彼の挿絵と、それをもとにして作られた精密な版画の展示の量がものすごく、
アートが大衆に求められるようになった時代の勢いというものをまざまざと感じることができた。


ただ、正直言うと、
ターナーの後期の作品、
あの細かい描写は一切なくなって、空と光と水蒸気だけがあるかのような茫洋とした絵、
…そういうのはごく少なかった。


私はそれが観たかったのだ(まあ予想はしていたけれど、予想以上に少なかった)。




そうは言っても先に書いたとおり別の意味でいろいろと面白かったので、がっかりはしていない。


出版物の挿絵になる版画の「原画」として製作された、ごく精細な水彩の小品を観ながら、
私はしきりにある小説の内容を思い出していた。


今も愛される英国文学の名作、「ジェイン・エア」である。

(ターナーを観ながら、同時代の作ではないかと感じたのだが、
帰って調べたら1847年の刊行だったので、ばっちり被っていることになる)



ここで小説のあらすじを書く余裕はないが、
ジェイン・エアは孤児院で教育を受け、やがて家庭教師として独立する。

この時代、イギリスの上流家庭の女子は、
音楽やフランス語や刺繍などとともに「絵を描く」ことをも、教養の一部として習得しなければならなかったようだ。

しかしジェインは本当に絵が好きで、
生徒に教えるためだけでなく、水彩画を自分の唯一の「趣味」として楽しむ場面が何度も出てくる。



しかしですよ、
現代の読者からすると、「なんでそんなもんを描くんだ」と言いたくなるような絵があるのだ。

今、手元に原典がないので正確な引用はできないが、
ジェインが描いた空想画の一枚は、
「荒れ狂う海で難破しつつある船、沈んでいく美しい女性の腕。その腕輪を海鳥がくわえている」というようなものだった、と思う。


ファンタジーが暗いのである。




でも、ターナーが手がけた挿絵をたくさん観ていくと、
「時代の気分」というものがなんとなくだが感じられてくる。


おおざっぱに過ぎるだろうけれど、
それは今よりずっと娯楽が少なく、
しかし産業の近代化とともに文化が大衆に浸透しはじめた時代。

歴史にもとづく荘重な詩が愛読され、異国への憧れ(特にイタリア)が強く、

…なおかつ今よりずっと死が身近にあった時代である。



時期が完全に被っていること、
またターナーの知名度からして、作者のシャーロット・ブロンテが彼の絵に全く接していないとは考えにくい。
少なからず影響は受けていたのではないだろうか。




個人がスマホでさくっと撮って即アップ、
その画像が話題になればすぐに世界を駆け巡る、といった現今の状況からみると、
「原画を描いて、版を彫らせて(ここで作者のダメ出しあり)、刷って」…というメディアのあり方ははるか遠くに感じられる。


でも「時代の気分」「流行のイメージ」を醸し出すという、
人間の不思議な習性はあんまり変わってないんだな。

…と、思いました。








この展示は今月15日までです。
気になってたかた、お急ぎください。


あと、「ジェイン・エア」はごく最近に至るまで何度も新訳が出され、何度も映画化された名作です。
面白いのでまだの方、読んでみてくださいね。












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  1. 2018/04/08(日) 23:38:18|
  2. 未分類

プロフィール

猫足

Author:猫足
京都生まれ、本業は工芸デザイン。
なのに趣味も絵。われながら不健康だと思います。


〔筆者近況〕

よく乗るバスが某女子大を通るので、
そこの学生のファッションを観るのが面白い。

夏の終わりからファーの帽子を被っているかと思うと、
秋が深まっても素足に短いソックスを履いている。

ああ、
外気温に左右されないのが若さというものだ。
…としみじみ思う傍観者です。

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