雨音のする画廊

ちょっとそこまで:島原、その1



ある日曜に、ふと島原あたりを散歩しようと思った。


島原は江戸時代に栄えた京都の花街、
今も「大門」を構え、「角屋」「輪違屋」という有名な店が残っている。

祇園などと違って今は静かなところだが、ぶらぶら散歩するにはちょうどいい。


実をいうと、勤務先からなら自転車でしばらく走れば行けるところなのだが、
出先からだったのでわざわざJRに乗り(←それだけでちょっと旅気分)、
丹波口駅で下車した。



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▲向かって右側が角屋(すみや)



現在の角屋は、「角屋 もてなしの文化美術館」として公開されている。

受付のかたが、「遠いとこから来はったん?」と聞いてくださったので、
「いや、市内です、でも初めて来ました」。
「なに!?」(という表情)


…いつでも行けるとおもうとなかなか行かないものなのである。


それにしてもこの美術館、
受付や解説など、あちこちで筆者の親くらいか、もっと年上のかたがたが活躍されているのだ。



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▲玄関を入ったところ。赤い壁が花街らしい



この玄関には、新選組のメンバーによる刀傷が残っている。
飲むときにツケがきかなくなった、というので暴れて付けた傷らしい。

無茶しよるなあ、と思いながら眺める。


いまは日本じゅうの歴史好きを惹きつけ、京都に呼び寄せる新選組だが、
その当時は地元のものにとって相当迷惑な存在だったであろうことは想像に難くない。

司馬遼太郎さんが取材したころは、まだ当時を知るひとが残っていて、
にがにがしげに「ミブロ(壬生浪)ども」と呼んでいた、とかいうのを思い出した。


なお、ここの「松の間」という広間は、隊士・芹沢鴨の最後の晩餐の場だったそうである。
ここでしたたかに酔って、近くの宿所で同士に討ち取られたとか。

宿所も大迷惑である。
なんで外でやってくれはらへんのや、と思ったことだろう。


歴史の息吹が妙になまなましいのは、京都ならではだと思う。



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▲広く立派な台所。角屋は「揚屋」という、今で言う料亭のような営業形態をとっていた



「今で言う料亭のような」というのは、現地での解説でもとくに強調されるところで、
つまりは江戸の吉原のように、客を取る遊女を常駐させるところではない、ということである。




DSCN1963.jpg
▲「松の間」から見る庭にある、変な茶室


「変な茶室」と言い切ってしまったが、
どうですかこれ。
こっち側の壁がないんですよ。
室内がまるっと見えて、学習図鑑の挿絵のようだ。

茶道の精神というのはときどき、素人には理解しがたきぶっ飛び具合で具現化されるので、油断がならない。



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▲「網代の間」


天井の、普通より目の粗い網代や、襖、凝った障子のデザインなど見るべきものがいろいろある部屋だ。


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▲中庭に面した、明かり取り用と思われる障子も美しい


その中庭は小さいけれど、ちょっとした謎があって面白かった。


DSCN1970.jpg


木の根元にあるのは、富士山の形をした石だという。


それよりも、この写真なにか変だと思われないだろうか。

手前の、角のところに柱がないのである。

廊下を入ってきたときに庭が美しく見えるよう、意図的に柱を省いてあるのだそうだが、
そうすると、雨戸はどうやって閉てるのだろうか?


この部屋の係のかたは、
「不思議でしょう?これは実際に見んと分からんやろなあ」と言いながら、
手に持っていたものを雨戸に見立てて、戸板が角を越える(!)様子を説明してくださった。

申し訳ないのだが、これは説明していただいても筆者の頭ではちょっと仕組みが分からない。




…謎は謎のままに、展示室では、
公開が限られている二階の、珍しい組み方の障子が展示されていた。


ここは撮影ができなかったのでお見せすることはできないが、
木材から削り出しで曲線を作り、
目の錯覚を生むような障子をつくるなんて、
建具ひとつにどんだけ凝るのか。
半ばあきれつつ、でも非常に面白く拝見した。



DSCN1976.jpg
▲襖の引手などにも注目




ゆっくりと見て回り、さて出ようとすると、
受付の、さっきのおじさまがまた声をかけてきてくださった。

歴史好きというよりは建築そのものに興味がある私は、
「やっぱり、遊ばはるところの建物は(お寺やなんかと違って)面白いですねえ」と正直なところを言った。

すると、わが意を得たり、という表情でなにか話を始めようとされたのだが、
お客さんたちが新しく入ってきたので早々に失礼した。



見せる側が本当に誇りに思っている、というのは、
見る側としても清々しいですよね。


ちょっと見とくか、くらいの感じで入ったけれど、
予想以上に見ごたえがありました。





さて、角屋を出ると、昼食の時間をかなり過ぎている。
なにか食べたいけど、ピークを過ぎたらしく空腹感はそれほどでもない。
それよりも美味しいコーヒーが飲みたい。



…さっき見かけた、気になるカフェに行ってみます。



続きは次回。















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  1. 2017/03/19(日) 23:13:50|
  2. 京都

プロフィール

猫足

Author:猫足
京都生まれ、本業は工芸デザイン。
なのに趣味も絵。われながら不健康だと思います。


〔筆者近況〕

先日、帰りが遅くなり急いで歩いていたら、
「あたらしい餅」
と書かれたのぼりが立っていた。

そりゃ古いよりはいいだろうけどさ、
…とよく見ると、
「みたらし小餅」だった。

こんな調子でいろいろ誤解してないか心配である。

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