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雨音のする画廊

今日の絵葉書:Jazz Violinist



「とかく、いつわりの多い子である。
チョコレート二十、ドロップ十個を嚥下し、けろりとしてトラビヤタの鼻唄をはじめた。
唄いながら、原稿用紙の塵を吹き払い、
Gペンにたっぷりインクを含ませて、だらだらと書きはじめた。
頗る態度が悪いのである」

(太宰治「ろまん燈籠」より)



 
…唐突だが、
(このブログはいつでも唐突だが)
「つけペン」を使ったことのあるひと、というのはどのくらいの割合でいらっしゃるのだろうか。


いちいちインク壺にペンを突っ込んで補充しながら使う、というめんどくささにはそれなりの目的があるわけで、
代表的な職業はやっぱり漫画家だ。

筆圧の加減で線の表情を変えることのできるつけペンは、
絵で語る「漫画」というメディアには欠かせないだろう。

(…「だろう」と自信なさげなのは、私が今の漫画事情に疎いからである)



あとは、カリグラフィーなどをたしなむかた、
ガラスペン・羽ペンなどペンそのものの雰囲気を愉しむひとなど、
やはり特定の目的なくしては「つけペンで書く(描く)」ということはなかなかないだろう。


ただ、
すこしでもその体験があれば、
冒頭の小説の一文などは感覚として入ってきやすいかもしれない。
ペン先のうちでももっとも筆圧に忠実なGペンは、
(小説中で)一家のうちでもややわがまま者の「次女」の作文にぴったりだと言える。


ちなみに、真面目な「長兄」の筆記用具は、

「長兄の万年筆は、実に太い。
ソーセージくらいの大きさである。
その堂々たる万年筆を、しかと右手に握って胸を張り、
きゅっと口を引き締め、まことに立派な態度で一字一字、はっきり大きく書いてはいるが、…」


…というわけで、万年筆の安定した書き心地と高級感が、面白みの無さの象徴のように扱われている(笑)
太宰ならではという戯画化なので、万年筆愛好家の皆さん怒っちゃいけません。


(しかし、縦書きの原稿用紙にたっぷりインクを含ませたGペンで書くというのが私には疑問である。
右利きなら、乾ききらない字が汚れてしまうはずだ。
…横書きの原稿用紙だったのかしら?)




さて、たまにだが、私も仕事でつけペン(Gペン)を使うことがある。

シャープペンシルやボールペン、ロットリングなど、
一定の線が出るようになっている筆記用具に慣れていると、
この不安定さ、不便さが新鮮で、
手先の感覚が細やかになるような面白さがあるのだ。

インクの色の濃淡にもいちいち味がある。


最初に書いたように、つけペンと言えば特殊な用途のためのものというイメージがあるけれど、
そうでなくても日記や手紙など、
あえてインク壺にペン先を浸しながら書いてみるのもいいかもしれません。




さて、今日の絵葉書。



img052.jpg





カラーケント紙に黒インク。Gペンでなくうちの古い丸ペンですが…



本日のモデルは、先週「F&J Project」のライブで生き生きとヴァイオリンを弾いてらした、REIKOさん。
ほんとはもっと美人です。こんどはじかにスケッチしたい。


普段はクラシックも演奏されているのだが、
ジャズだと「会話ができるのがすごく楽しい」とのことだった。


やっぱり、演奏する側が「楽しい」「新鮮だ」と感じていらっしゃるのは、かなりの程度聴き手にも伝わるのだと思う。
私も聴いていてすごく楽しかった。




…だからやっぱり私も、
ときどきは描く道具を変えてみよう、
誰かに伝わるかどうかは別として。






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  1. 2015/04/11(土) 00:22:59|

プロフィール

猫足

Author:猫足
京都生まれ、本業は工芸デザイン。
なのに趣味も絵。われながら不健康だと思います。


〔筆者近況〕

夜間によく吠えてうるさかった近所の犬が、
しばらく屋内にしまわれていたのだが、
最近、外の犬小屋に戻ってきた。

彼は、このひと夏で何か学習したのだろうか。


しばらく観察します。

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